2019
3
Nov

百合小説

18禁創作百合エロ小説 HちゃんとDHちゃん 未出版分

Kindleから出版の18禁創作百合エロ小説「ヒーローちゃんとダークヒーローちゃん パワーを使うとムラムラするから百合っちゃってもいいよね!」シリーズの続きをちまちま掲載していきます。
新刊出版まではこちらで無料公開しますが、出版後は削除するので、マメにチェックしていただけると良いかと。

1巻はこちらへ。

1巻までのあらすじ。

超人的な能力を持ち、政府機関で慈善活動を行うヒーロー、藤貫冬霞は、夜中に要請を受け、敵能力者の撃退のため出動する。しかし、冬霞を含めた全ての能力者には、能力を使うほどに性欲が増すという副作用があり、敵の能力者であり、幼馴染の紙透夏雁と関係を持ってしまって…。

以下、未出版分。


藤貫冬霞生態観察日誌、ニ三六九。
今日もフユカはベッドに女性を連れ込んでいる。今日の相手はおっとりした顔付きに、ややぽってりした体型の、恐らくプロ。このところ頻繁にフユカの部屋を出入りしている。
私は二人で過ごす夜が恋しくて、身悶えしない日はないというのに、フユカが私を寝室に招くことはない。
身体を重ねてもまだ、私はセフレ以下。特別な一人には程遠いようだ。

フユカの部屋の中で、唯一片付いている寝室。ぬいぐるみだらけのベッドの上で、二人は情事に及んでいた。
私は全裸で、じっとその様子を眺めていた。

「アリサさんのココ、すごぃトロトロ……」

プロのアリササンは、そんな言葉を囁かれながら、フユカの舐陰を味わっている。羨ましすぎてハゲそうだ。
愛しい人が、性器を舐めてくれる。この世にこれ以上、官能的な行為があるだろうか。否、あるわけがない。
まして私の愛しいフユカは、世界中の可愛さを集めて、じっくりコトコト煮込んだかというくらい可愛い。その可愛い顔を脚の間に埋め、小さな舌で懸命に淫裂をなぞるのだ。それはもう、例える言葉が見つからないほど淫らで、身体中の血液が体外に躍り出てしまう。
比喩や冗談ではない。過去に一度だけしてもらったときは、興奮と陰部への刺激が相まって、鼻から血が吹き出た。ベッドでのフユカは、そういう妖怪かなにかかと思うほど妖艶なのだ。今こうして眺めているだけでも、スプリンクラーのように鼻血を撒き散らしそうになる。
ちなみに私は招かれてここにいるわけではない。私に備わる特殊能力で、幽霊のような存在になり、覗き行為に及んでいるだけだ。
能力発動中の私の身体は、あらゆるものをすり抜ける。二人の目に私は映らず、触れられることもない。だから存在に気付かれることはないし、自分の身体を、ベッドで嬌声をあげる人物に重ねて合わせることもできる。
なぜそんなことをするかといえば、そうすることでVRのそういうコンテンツのように、舐められている気分を味わうことができるからだ。陰部をくすぐる吐息や、ざらついた舌の感触を得ることはないけれど、眺めは最高に最高。

「あぁ……、フユカ……。すごい上手、気持ち良い……」

自分で自分を慰めれば、自然とこんな言葉が零れてしまう。
なんでもすり抜けられるのに、自身の肉体には触れられるのが、この能力の素晴らしいところだ。自慰を覚えて以降、何度フユカの前でこうしたかわからない。それがかなり気持ちの悪い行為であることは理解している。けれど、大したリスクもなく、快楽を得られるという特権は、善悪の感覚など容易く歪ませてしまう。その上、能力の使用には、異常な性欲昂進という副作用が伴う。その相乗効果の前では、罪悪感などもはや興奮のスパイスにしかならなかった。
股ぐらにむしゃぶりついているフユカの表情を眺めて、膨らんだ肉芽をさする。次第に入り口付近に、ピリピリとした感覚が溜まっていった。肉筒がぎゅっと痛む。フユカにされていると想像しながら指を埋めた。

「んっ……、ふ……」

フユカの細い指とは感触がまるで違う。それでも昂りきった肉襞は、餌に群がる魚の群れのように、侵入した指に喰い付いてきた。濡れそぼった虚の中、つるつると指が滑る。、

「ハァ、ハァ、フユカちゃん……。ッぁ、たし……、もぅ、イきそぉ……」

私の代わりに、アリササンが声を上げた。

「ふふー。いいですよぉ、イっちゃってください」
「あっ、そこイイ……。はぁ、ァ、……ん、あぁ、イく……。アアアァァァッ!!」
「っ……、う、ぁ……」

私とアリササンは、ほとんど同時に果てた。存在しているかもわからない幽霊のような身体を生暖かい痺れが広がっていく。
フユカは生意気さを含んだ満足顔で、私に覆いかぶさる。正確には、私が身体を重ねている相手に。

「アリサさん、中がすごんいギュギューッてしてましたよ」
「うふふ、だって、すごいよかったもん」

艶っぽい吐息を含ませて、アリササンは囁いた。満ち足りた様子に、苛立ちが沸く。
私も達したばかりだが、能力の副作用のせいで、腹の奥の飢えは少しも静まらない。むしろ余計に昂ぶってしまったくらいだ。じんじんと痛む肉筒に集中を奪われ、能力のコントロールが危うくなる。というより解除して、フユカの中を舌で掻き回したい衝動が、爆発寸前まで高まっていた。

これ以上、ここにいたら不味い。

私はベッドを降り、振り返らず、まっすぐ前へ進んだ。
壁をすり抜け、隣の自分の部屋へ戻る。霊化を解くと、ぶわ、と熱が湧き上がった。それは下腹部に集まって、脚から力を奪うので、思わずソファーへ倒れ込んでしまった。
夢中になるうちに、能力を使いすぎたらしい。腹の奥のうずきが、槍のよう、下から脳天を突く。衝動に熱せられた眼球が、焼けた金属を連想させた。
欲望のまま脚の間をさすり上げる。二、三度、達したが、あまり熱は引かない。股座に手を突っ込んだまま、テーブルの上のスマートフォンから、すがる思いで、所謂、セックスフレンドに連絡を入れる。
ちょうどスマホを触っていたところだったのだろう、すぐに既読が付き、承諾の返信が来た。

「ん……、は、助かった、けど……、ふ……、あと、三十分、か、……うぅ、はぁ」

安堵したのも束の間、音が立つのも構わず、乱暴に性器をいじり回す。何度達しても治まらない疼きのせいで、わずかの待ち時間も果てしなく思えた。
副作用で湧く性欲は、怪しい薬でも盛られたかと思うほど強烈だ。その上、一人ではなかなか治められないのだから始末に悪い。もしも相手がいなければ、腹の内側が燃えているような感覚の中、何日も股をさすって過ごすことになる。
完全に自業自得とはいえ、そんな苦行は御免だった。

「はぁ……、覗きして、副作用出て、適当な相手で発散、なんて……。バレたら、もっと嫌われちゃう、よね……」

ようやく、少しだけ落ち着いた私は、ため息と共に独り言を吐いた、ソファーの背もたれにかけてあったタオル地のガウンを羽織る。白くどろどろの粘液が纏わり付いた指を洗面所で洗い、リビングに戻ってテレビをつけた。

『トップ賞は、藤貫冬花ちゃんです!』
『ヤッター!!』

満面の笑顔を浮かべたフユカが映り、心臓が跳ねた。
焦って録画状況を確認する。きちんと予約されていたことを確認し、ほっとしてリモコンを置く。
画面に映るのは、生き物系のクイズ番組。賞品の旅行券を贈呈されたフユカが、ぴょこぴょこ嬉しそうにジャンプしている。リボンやフリルのたくさんついた衣装が、よく似合っていた。
チョッキのウサギを追いかけて迷子になる様を思い起こさせる容姿。それは、乱れて口淫をねだる姿など、想像もできないほどの幼さを感じさせる。『可愛いものと甘いものが大好きな永遠の12歳』がコンセプトのアイドルユニットでリーダーを務めるのも納得だ。

「実際は、エッチなお姉さんと、ジャンクフードが大好きな、21歳なのにね」

カメラの前のフユカは、わかりやすく可愛い。けれど、プライベートを知っていると、そのギャップに笑いがこみ上げてしまう。

「私の前でも少しくらい、可愛くしてくれたらいいのに」

時々思うことが、ぽつりとこぼれた。
以前本人に言ったこともあるが、フユカ曰く、『可愛いは有料なの。ギャラ無しで出すわけないでしょ』だそう。だけど、生来サービス精神旺盛のフユカは、基本的に無償でも可愛さを提供することを私は知っている。今だって隣の部屋で、アリササンとやらを相手に愛想を振りまきつつ、また身体を貪っているはずだ。本性丸出しの応対をされるのは私だけ。たぶん、私からは好かれても嫌われても、どちらでも良いと思っているのだろう。
しゅん、と胸が萎む。振り払いたくて、過去数回だけ、抱き合ったときのことを思い出す。どこもかしこもトロトロで、もっともっととねだられた。あの淫らな表情を思い出すと、カラカラに喉が渇いていく。
まだ身体の奥で燻っている副作用が、ぎゅっ、と肉壁を収縮させた。呼び出した相手が来る前に、もう何回か、自己処理しておかなくては。
テレビを消し、また、脚の間に手を伸ばす。

「フユカ……」

そんなつもりはないのに、名前が、湿っぽい熱と一緒に吐き出される。じんと目頭が傷むと同時に、頭を白い霧が覆っていった。

翌朝、食器を片付けていると、インターホンが鳴らされた。忘れ物かとドアを開けると、そこにいたのは昨夜の相手ではなく、フユカだった。
きゅ、と息が止まる。

「あ~、おなかすいたぁ~」

フユカは用件を聞く間もなく、私の隣をすり抜けた。

「……はぁ、朝ごはんなら、もう片付けちゃったよ?」
「えぇ~、なに? 今日早くない?」

ため息のフリの深呼吸のあと、出来るだけ感情を込めずに言うと、フユカが不満そうに口を尖らせる。帰るそぶりはない。当たり前のように、二人用のダイニングテーブルに顎を乗せて座った。「ごはん~、おなかすいたぁ~」と伸ばした手で天板をぺちぺち叩きだす。
フユカは普段は私を毛嫌いするくせに、こういうときはいつも、調子よく擦り寄ってくる。子供の頃からの努力の賜物だ。それか、私の好意も策略も、なにもかも見透かした上で、利用しているか。
どちらにしても、ここで喜んで食事を出してはいけない。

「早く目が覚めたんだから、しょうがないでしょ」

努めてそっけなく、フユカに背を向け、皿洗いを再開した。
実は早く目が覚めたわけではなく、さっきまで部屋にいた子の予定に合わせたからだけど、そしてその子を呼ぶ必要があったのは……。思い出すと、色々なことが後ろめたくて嘘をついた。

「…………簡単なのでよかったら……」
「ベーコンと、目玉焼きと、フレンチトーストが良い!」

耐えきれず振り返ると、フユカは遠慮のかけらもなくオーダーを入れてきた。でも生憎、トーストもベーコンを切らしている。それを伝えるとフユカは、ピザだの、ホットドッグだの、ハンバーガーだのと、さらに難易度の高い要求を出してくる。昼間なら電話一本でデリバリーできるが、今は時間外だし、私はフユカにジャンクフードの類のものを食べて欲しくない。

「じゃあ、カレーでいい。目玉焼きと、ソーセージと、納豆トッピングで!」
「はいはい。でもソーセージはないからね」

私は冷凍庫から、カレーとご飯を取り出して、オーブンレンジへ入れた。

「あとコーラ!」
「はぁ……、朝からそんなの飲んでたら、糖尿病になるよ」

呆れつつ、冷蔵庫の奥にあったコーラを手渡す。
炭酸が苦手な私は、コーラなんて飲まない。でもフユカが時々、ご飯をたかりに来たときのためにいつも二本は冷やしていた。カレーについても、同様の理由でストックしてある。こういう細かな気遣いが、他と差をつけると信じていた。

「お酒とかタバコより、はるかにマシでしょ。能力者は病気になんかならないし!」
「わからないでしょ。能力者の体質なんて、ほとんど解明されてないんだから……。フユカは大酒飲みだし、いつもジャンクフードとか、お菓子ばっかりで……」
「太らないからいいの!能力使うとお腹空くし!」
「それは能力使ったせいじゃなくて……」

言いかけた時、チーン、とレンジが加熱の終了を伝えた。パッとフユカの目が輝く。私は取り出した皿をフユカの前に置いて、向かい側に座った。

「いっただきま~す」

フユカはほとんど一気飲みのような勢いで、カレーを口へ運ぶ。フユカの好みを知り尽くした私の特製なのだからそれも当然。
大きめにカットした豚バラ肉と、たまねぎ、大根。フユカの嫌いな人参は、やや小さめに切ったものと、みじん切りを混ぜて入れているし、ブロッコリーも気付かれないよう、茎だけをサイコロ状にして紛れさせている。ルウは市販の物だけど、スパイスを追加して、フユカ好みにしていた。
だからモリモリ食べてくれるのは嬉しい。でももう少しくらい味わって食べてほしくもある。

「もう少しゆっくり食べたら? ていうかちゃんと噛んでる?」
「もままむいへふんふぁふぁひははまひへほ~」

ため息をついてみせると、フユカは口にカレーを頬張ったまま、もごもごと言い返してきた。たぶん、お腹が空いてるんだから仕方がない、と言っている。眉間にシワがよっていないところを見ると、今日は機嫌がいいらしい。
カレーが美味しいからか、それとも、昨日の相手がよっぽど良かったのか。
昨晩、目にした光景が目に浮かび、胃が重たくなる。つい数時間前まで、他の相手と楽しんでいたフユカに、どうして朝食なんか提供してるんだろう。
ふいに、暗い気持ちが湧く。身体がゆらりと立ち上がった。
カレーを食べ終えたフユカは、コーラをがぶ飲みしだした。私は静かに背中へ回る。ぷはぁ、といささか品のないため息を漏らしたところ、その小さな顎に手を回す。頭を反らせ、上から唇を重ねる。少し油っぽい唇を、下唇でなぜる。顎を支える手から、カッ、と熱が首へ登ってくるのが伝わった。

「ちょ……ッ、な、なにしてんのさ!」
「カレー、食べたでしょ。朝食代よ」

私を振りほどいたフユカが、唇をわなわなさせた。極力涼しい顔をして、白々しく肩をすくめてみせる。
真っ赤になって怒る様が初々しさを感じさせる。可愛い。
フユカは、私とも昨日の相手とも、もっとすごいことを散々している。なのに不意をついた途端こうだ。きっといつも自分がする側だから慣れないんだろう。フユカからこういう反応を得られるのが、なんだかとても特別なことのような気がして、だから、本当に時々だけど、つい、こういうことをやってしまう。
でも今のはちょっとやりすぎだったろうか。
不安が湧く。でも悟られないよう、じっ、とフユカを見つめた。フユカはしばらく、目を見開いたまま私を睨みつけたが、やがて視線を落とし、眉を寄せて、それから黙って部屋を出て行った。
と思ったらドスドスと足音をさせて戻ってきた。飲みかけのコーラをひっつかみ、バン、と思い切りドアを閉めて出て行く。そして今度は、戻ってこなかった。
途端、室内は火が消えたようになる。
しん、と耳の奥に静寂が響いた。私は長く息を吐き出して、椅子に腰を落とす。フユカの体温だけはまだ、椅子の上に留まっていた。

手を握る、肩を抱く、頭を撫でるなどなど。不意打ちを仕掛けることはこれまでもあった。でも唇を奪ったのは初めてだった。
壁一面の大きな鏡がある以外、特徴もない部屋にひとり。腕組みをして、椅子にもたれる。
流石にやり過ぎだったろうか。
私はいつもそうするように、フユカのことを考えていた。
唇の感触や、カレーの匂い、身体を重ねた夜のこと、能力を使い盗み見た私生活を思い返す合間に、心臓が嫌な動きをする。
肉体は本人だけのものだ。許可なく触れて良いものではない。他人の財布や、スマホに勝手に触れてはいけないのと同じ。私だって突然触られたら、それが肩でも腕でも、相手が同性でもびっくりする。だから、無断でキスなんて、もってのほか。というか犯罪だ。暴行罪なのか、傷害罪なのか、強制わいせつなのか。罪状はわからないけど、とにかくやったらいけないことだ。なのに私はなんてことを。ああ、それもこれも、フユカと一発ヤってしまったせいだ。正確には四、五回だけど回数は関係ない。初めて触れた瞬間から、私の頭の中に住んでいるフユカが肉感を持ってしまった。以来、毎秒、現実に則したリアリティを纏って、淫らに私を誘ってくる。猫のようににゃあにゃあ鳴いて、「うにゃぁ、もっとぺろぺろしてぇ」なんておねだりを想像した日には、涎が止まらなくなってしまう。いやらしいフユカを思い描くのはいつものことだけれど、こうもイメージが強力になっては、私の無敵のポーカーフェイスもいつか崩れてしまうかもしれない。それは不味い。ムッツリドスケベがバレる。それどころか、フユカにぞっこんのウルトラべた惚れなこともバレてしまうかもしれない。そうなれば、小学生の頃からコツコツ積み重ねた、フユカをお嫁さんにするための努力がすべて水の泡だ。それだけはなんとしても避けなくてはならない。そう、つまりは、

「そう、カレー味のキスにニヤニヤしてる場合じゃない」

頭を上げると、鏡に真剣そのものな自分の顔が映った。

「爆発しないように、今晩の相手、見つけておかなくちゃ」

仕事仲間が来る前に、誘いを入れておこう。長机に放り出していた、スマホを手に取った。
通知画面に一件、メッセージが入っていた。
時々、協力を要請してくる能力者団体だ。必要とあらば非合法的な手段も取る自警団のような組織で、フユカの所属する政府公認の能力者団体とは敵対関係にある。できればあまり関わりたくはない。けれど、副作用が出たときのための協力者を紹介してくれている関係上、無下にもできなかった。
渋々、メッセージを開封する。近頃、若者の間にドラッグを流しているディーラーの逮捕に協力してほしいという内容だった。未だ証拠を掴めない警察のために、警察内の協力者を通じて、物証と証拠映像を提供するらしい。

「取引現場は撮影済み、あとは物証だけね。了解」

承諾の連絡を送ると、計画の詳細が返信される。スマホを机に戻し、天井を仰いだ。
恵まれた能力というのは、他者のために使うべきだ。それを私は、自分のために使いすぎる。フユカと敵対関係になるのはいただけないけど、バランスを取る意味で、善行と呼べる活動には助力するべきなんだろう。
私は目を閉じ、自分を納得させる。そうしていると、廊下から騒々しい足音が近づき、ドアをノックされた。

「やっぱりカガリ先輩一人だ、ラッキー」

返事を待たずに開けられたドアの向こうには、同じ事務所に所属する後輩アイドルがいた。

「あれ? ウッキー、どうしたの?」
「もー、先輩はウッキー呼びやめてくださいよっ」
「はいはい、キララちゃん、どうしたの?」

言い直すと、ウッキーこと宇都宮きららは、満足そうに微笑む。私の脚の上に座って、首に腕を回してきた。
栗色をした、長めの髪が揺れる。

「上のスタジオで収録だったんですけど、リベリオの人たちルーズだから、絶対まだ先輩一人だと思って、寄ったんです」

リベリオは、私が所属するユニット名。アイドルのはずなのに、やってることはほぼロックバンドという奇妙な集団だ。音楽番組以外、テレビ出演も殆どないため、テレビ局に来るのも久しぶりだった。

「嬉しいけど、さすがにもう、みんな来ると思うよ」

今日は生演奏があるので、気合の入ったメンバーがいつもより早めに来るかもしれない。
あまりこの状況を見られたくない私は、隣にある椅子を引き寄せ、やんわりそっちへ座るよう促す。が、キララは脚の上から退く気はさらさらないらしい。私の頭を抱えるように抱きしめて、頬ずりする。

「先輩、最近呼んでくれないですよね……」
「……ちょっと忙しくて、ごめんね」

私はキララを退かすことを諦めた。艶っぽい囁きに応えて、キララの腰に腕を回す。柑橘系の香りのする首筋に唇を寄せ、チュ、と音をさせた。キララは微笑み、頭へ回していた腕を解いて、両手で私の頬を包む。逆らわず、腰を抱いていた手を首の後ろへ移動させ、唇を引き寄せた。
触れ合わせ、次第に深く、口付ける。舌を奥に潜らせると、キララは私の肩を落してもがいた。

「んっ、もぅ、普通のキスで良かったのに、やらしすぎですよぅ……」
「久しぶりだったから、つい、ね。嫌だった?」

髪を撫でると、キララは「そんなことないですけど……」とこぼして、顔を逸らした。

「私、今晩なら時間あるけど、どうする?」

キララ好みの、低い囁きで、誘う。
ちょうど今晩は、裏稼業のお仕事もある。乗ってくれたら、私にとっては渡りに船。じっと見つめて、返答を待った。

「……十時くらいでいいですか?」
「十一時、かな。そっちに行こうか?」
「先輩の部屋の方が綺麗ですから、私が行きますよ」

私の腕をすり抜け、キララはパッと脚の上から降りた。踊るように数歩下がり、くるりと回って、微笑んでみせる。
愛らしさに、ついつい、目が細くなる。
こういう反応をキララは見逃さない。

「久しぶりだし、先輩の手料理、ご馳走してほしいな」

なんて甘えた声を出す。私は苦笑しつつ、「簡単なもので良ければ」と頷いた。
いったい何人が、この甘え上手の虜になっているのだろう。そう思わずにはいられない。
キララは性的に奔放で、他にも肉体関係を持つ相手が複数いた。狙いをつけた相手に小さなお願いをして、徐々に大きくし、最終的にはベッドに誘うという手口で、相手を増やしているらしい。能力者でもないのになぜ? と思ったものだ。私とはまた違う深刻な事情があるのかと心配したが、関係を深めるうちに、単純にそういう性格らしいとわかり、複雑な気持ちになったことを覚えている。
可能なら一対一の関係を望む私にとって、キララの存在は、ありがたいのと同時に、理解不能な存在だった。だけどそんなところが、フユカに似ている気がして、魅力的に思えるのも事実。

「じゃあ、夜、待ってるから」

私は「ハマり過ぎないようにしなくては」と自分に言い聞かせながら、キララを見送った。


続きを書いたらまたちまちま追記していきますー。

 

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