2020
20
Jul

百合小説

沖ノブ(fgo)18禁百合エロ小説 沖田とノッブの川遊び

じりじりと、太陽の照り付ける、田舎道。
私はパンクした自転車を、懸命に押す。
猛暑日で気温が高く、真っ青な空からは、容赦なく熱が降り注ぐので、顔のすぐそばで、火が燃えているような感覚に陥っていた。
その上、身に着けた白のワンピースは、照り返しが酷く、汗を大量にかいたせいで、生地が重い。
身体はだるいし、吐き気に頭痛もしてきた気がする。
私の体力は、かなり限界に近付いていた。

「きっと中のチューブが痛んどったんじゃなぁ、錆も酷いもんじゃし」

すぐ前で、同じように自転車を押して歩くノッブが、へらへらと笑った。
私はこんなにもヘトヘトなのに、ノッブはピンピンしている。
ださださの真っ赤なTシャツを着た背中が、目にも暑苦しいのを、心底、憎らしく思った。

「だから、あとで、くるまで、いきま、しょうって、いった、のに…………」

私は、切れ切れに、不満を絞り出した。
本当なら今頃は、ノッブの家が所有する古民家で、山ほど借りてきた心霊DVDを、みんなで見ていたはず。それなのに炎天下の中、パンクした自転車を押して歩く羽目になったのは、確実にノッブのせいだった。
思い付きで「今すぐラムネが必要じゃ!」なんて騒ぐものだから、ダーオカが物置から自転車を見つけてきて、二人を買い出しに出そうなんて話になって、じゃんけん大会が開催され、見事じゃんけんに負けた、私とノッブが、オンボロ自転車で買い出しにいくことになったのだ。
先に買い出しに出た土方さんが戻るまで待とうという、至極真っ当な私の意見はスルーされ、その結果がコレ。
暑さでバテていなければ、延々と文句を並べてやりたいところだ。
それなのに、ノッブは、

「そもそもお前が、『今ビールと麦茶しかないですし、ラムネとかも欲しいですね』なんて言うからじゃろ。わしじゃって、飲みたくもなるわ」

などと抜かして、悪びれる様子もない。
私は腹立ちまぎれに、「だから! すこしくらい! まてばよかったでしょう!」と、声を荒げてみせた。
けれど、この暑さの中では、そんな力もすぐに抜けてしまう。

「ぜぇ、はぁ……。と、というか、ひじかたさんが、けいたいを、けいたい、してて、くれれば、ですね……」
「…………なんじゃ、沖田。お前、なんか今にも死にそうじゃの」

誰の! せいだと! 思ってるんですか!
そう、文句を言おうと、重い頭を持ち上げたとき、ほっぺたに冷たいものが触れた。

「熱いし、真っ赤じゃし、熱中症ではないか?」

ノッブは、ラムネの瓶を握った手の、人差し指と中指で、無遠慮にぺたぺたと触れてくる。
振り払ってやりたい。
けれど、火照った肌に、冷えた指先が触れる、その心地よさに負けた。私は黙って、ノッブの持っているラムネの便に、頬を押し当てる。
つるりとした丸みのある瓶は、まだ冷たいまま、ひんやりしていた。
重たさを感じるガラスの感触が、緩やかに熱を奪っていく。
中のラムネのことなどお構いなしに、涼を味わっていると、ノッブは少しだけ困ったように鼻を鳴らして、「涼んでいくか」と、呟いた。
帰路を外れた私たちは、ほとんど獣道のような道へと、足を踏み入れる。
進むほど、木が太陽を遮り、空気が湿っぽいような、冷たさを帯びてきた。
比例するように、蝉の声が大きくなる。

「ま、二、三本飲んで寝とれば、すぐ楽になるじゃろ」

そういうとノッブは、自転車を止め、自分と、私のカゴに入ったビニール袋を掴みあげる。
たしかにここは涼しいですけど、こんなところで寝たら、泥だらけになってしまうんですが?
私は怪訝な顔をしてみせたが、ノッブは私に背中を向けて、さらに鬱蒼とした道へ入って行ってしまった。

「ちょ……、置いてかないでくださいよっ……」

慌てて追いかけると、すぐに視界が開け、涼しげな河原が姿を現した。
丸みを帯びた大きな岩の向こう、青く澄んだ水が、穏やかに流れている。
日陰にある岩に腰を下ろしたノッブが、ビニール袋から二本目のラムネを取り出し、ごくごくと音を立てて飲みだすのを見た私は、喉がヒリつくほど乾いていることに気が付いた。

「ずるいですよっ」

私はノッブのラムネをひったくって、一息に飲み干す。空瓶を返し、ほっと息をつくと、さっきより身体が軽くなった気がした。
その飲みっぷりを見たノッブは、「心配なさそうじゃな」と、カラカラ笑った。

「回復するまで、じゃんじゃか飲むと良いぞ」
「そんなことしたら、みなさんの分がなくまりますよ」
「緊急事態じゃ、飲み尽くしたって構うものか。まだ銭も取っとらんしの」

言いながら、ノッブはまた、ラムネを開ける。
本当に構わないと思っているらしい。ラムネと一緒に買ってきた、塩飴を噛み砕き、ポテトチップスまでつまみだした。
あまりの遠慮のなさに釣られて、私も二本目を開けてしまう。
ノッブの隣にちょんと座ると、お尻の下の岩は冷たくざらざらとしていた。
見上げた空は、濃い緑で覆われて、耳の横を、さわさわと風が通り過ぎていく。蝉の声が、存外けたたましいことを除けば、とても居心地の良い場所だった。
かろん、と塩飴を口に入れる。
甘じょっぱい、レモンの味が広がって、頬の内側がしびれた。

「いいトコですね」

そう言うとノッブは、「そうじゃろそうじゃろ」と、快活に笑う。
二人のときのノッブは、よくこんな顔をする。
あまりに楽しそうだから、気持ちが引っ張られてしまうんだろう。ノッブの笑顔を見ると、私はいつも浮きたつような気持になる。
思えば、ノッブと二人きりになるのは、ずいぶん久しぶりだった。
中学生くらいまでは、どこに行くのも二人だったけれど、ノッブがバンドを始めたくらいから、複数人で遊ぶのが当たり前になっていった。
この旅行だって、大学のサークルのメンバーが全員参加しているし、他のイベントも、大体このメンバーで行く予定だ。それはそれで賑やかで楽しいのだけれど、ノッブと二人のときの楽しさとは、楽しさの種類が違う気がする。
……ノッブも、二人だと違ったりするんでしょうか?
なんとなくそんなことを思って、隣を見る。
ノッブは二本目のラムネを、もうすっかり飲み干し、ずごーっ、と音を立てて、残った水滴を啜っている。そうして空になった瓶を地面に置いて、今度はぺたぺたと川の方へ歩いて行った。
そんな姿がなぜだか微笑ましくて、私は口元が緩んだ。
でも、それも束の間。
ノッブはおもむろにシャツを脱いで、そればかりか、短パンも下着も脱ぎ捨てて、ビーチサンダル一つで、水へ入っていった。

「ちょっ……! な、なにしてるんですか!」
「見ればわかるじゃろ、遊泳じゃ!」

それはわかるが、そうじゃない。

「いや、外ですよ、ここ!」
「こーんなトコ、誰も来やせんわ!」

言うなり、ノッブは川の深いところへ、ざぶん、と潜ってしまった。
かと思うと、すぐに浮き上がってきて、「ほれ、見ろ、沖田! カニじゃ!」なんて言って、こちらに放り投げてくる。
真っ裸だというのに、なにも気にしていないらしい。
そりゃあ、たしかに周りは木ばかりですけれども、もう少しくらい、人目を気にしてもいいんじゃないでしょうか。目は、私にもついてるんですし。
じっと睨んでみても、ノッブは白い素肌を存分に晒して、それはそれは楽しそうに、川遊びに興じている。
その身体は、全体的に肉付きが薄く、手も足も細くて小さい。なのに、夏の、強烈な色彩を打ち負かすほど、強い生命力を感じる。潜っては飛び出したり、魚を捕まえようとしてみたり、浮かんで流されてみたりと、眩しいほどに元気だ。というか、子供っぽい。
それなのに、水の滴る髪を、きゅうと絞る仕草だけが、やけに目を奪う。
形容する言葉を、探してはいけない気がした。
ぷい、と視線を逸らした私は、サンダルを脱いで、川縁の岩に腰を下ろす。ノッブが投げたカニを逃がして、熱を冷まそうと、足を川に浸した。
火照った肌の表面を、冷たい水が撫ぜていく。

「来んのか? 沖田、涼しいぞ」

立ち上がったノッブが、濡れた髪を掻き上げながら私を見る。
私はその姿を視界に入れないよう、明後日の方を見る。

「沖田さんは良いです! ここ、十分涼しいので!」と、断ると、
「水の涼しさには負けるじゃろうが、ほれっ」と、水をかけられる。

ここで乗ってしまっては、完全にノッブのペースだ。
頭ではわかっているものの、つい、「なにするんですか!」と、追いかけてしまう。
バッシャバッシャと、水しぶきを浴びせてくるノッブへ、手を伸ばす。ノッブはそれを面白そうに躱しては、水面を蹴り上げ、「鬼さんこちら」とでも言うように距離を取る。
やっと捕まえた頃には、全身ずぶ濡れ。その上、ノッブを川へ押し倒す格好になったものだから、頭から水をかぶる羽目になってしまった。

「うはは、冷やっこくて気持ちええのう。のう、沖田」
「のう。じゃないですよ。どうしてくれるんですか、この服」
「絞って、日向の岩にでも置いとけば、すぐ乾くじゃろ」

ノッブは、半分水に沈んだまま、満足そうに微笑む。
途端、心臓が騒ぎだした。
耳の奥に響く鼓動が、降り注ぐセミの声を、瞬く間に掻き消す。
組み敷いた、揺らめく身体から、目が離せない。
水に沈んだ白い肌、流れに揺れる黒髪、いたずらっぽく細められる紅い目。そのどれもが、初めて目にするもののように感じられるのはなぜだろう。
湧いた疑問の答えを探ることに、危険感を感じた次の瞬間、

「ふっ。すんごい顔しとるのう、沖田」

ぴちゃり、とノッブの手が頬に触れる。
ぎくり。
独りでに肩が震えた。
顔がぼうぼうに熱いのが、わかったせいだ。
冷まさなくては。
咄嗟に目の前の水に顔を沈めると、額が暖かくて柔らかいものに触れる。

「ぶはっ! あ、あの、ち、ちがいますから!」
「なにが違うんじゃ? ひと夏の思い出作り、したいんじゃろ? わしは構わんぞ」
「だから、ちがいま…………、いま、なんて……?」

”ひと夏の思い出”とは、”そういうこと”の意味合いもあったはず。
それが、”構わない”とは、つまり……。

「裸のわしを、押し倒しといて、なんもなしで済ますつもりはなかろう?」
「は? え? いや、あなたが自分で脱いだんじゃないですか! た、倒したのだって、不可抗力ですし!」
「ほう? こーんなガッチリ捕まえとるクセにか?」

ノッブが指をわきわきとさせて、初めて私は、その両の手首を、強く握りしめていることに気が付いた。
ぽたり。
雫が頬を伝って、水面に落ちる。
早く、手を緩めるなり、上から退くなりなりしなくてはいけないのに、身体が動かない。
全身から湧き上がる熱ばかりが、頭の中を駆け回る。
ぐるぐる、世界が回っているみたいだ。
そんなことを思っていると、本当にぐるんと回って、ノッブの後ろに流れていた川が、真っ青な空に変わった。

「ま、わしに任せておれば問題ない。おぼこは楽にしとれ」

言うなりノッブは、ワンピースのボタンに手をかける。
反射的に腕を振った。
乾いた音が、掴み合いの合図になった。

「がぼぼっ、どうして、ノッブはいっつもそうなんですか!」
「っぶは、いつもてなんじゃ! お前に手を付けたことなんか、なかったじゃろが! ふごぶっ!」

上になり、下になり、水の中、取っ組み合う。

「なら、なんで今更手を出すんですか! 沖田さんとも縁切りたいってことですか!」
「はあああああ!? お前がずーーーーーっと、物欲しそうな目で見るからじゃろ! ガキの頃からいつもいつも!」
「はあああああ!? そんな目したことありませんけどおおおおお!?」
「つーか、縁切りてなんじゃ! わけわからんぞ!」
「ノッブはいっつもヤリ捨てって評判じゃないですか!」
「お前がいつまでも煮え切らんからじゃろうが!」
「なっ! やっぱり遊んでたんですね! この色ボケ天魔王!」
「やかましい! ちょっとつまみ食いしたくらいなんじゃ!」

気付けば互いに、平手を拳に変えていた。
一切の加減もない、全力の殴り合い。私たちの場合、それは、どちらかが倒れるまで続く。
しばらくすると、ノッブは鼻と口から血を流し、疲れた様子で川へ尻もちをついた。
私はその様を、立ったまま見下ろしたかったけれど、生憎、ノッブよりも先に、川の中で寝転がっていた。
身体のあちこちが痛んで熱を持つ。
だけど、さっきまで頭の中を渦巻いていたモヤモヤは、すっきりと晴れていた。
するすると、肌の上を滑っていく水が、体温を流していくのが気持ち良い。

「なんじゃ、ニヤニヤしよって、ほんに可笑しなヤツじゃの……」

いつの間にか私を覗き込んでいたノッブが、怪訝そうに眉を顰める。

「いやぁ、なんだか、暴れたらスッキリしたもので……。んふふ、久しぶりですね、こういうの」
「はぁ……。こんなん、もう卒業しても良い頃合いじゃろうに、この脳筋は……」

呆れたように言われたけれど、ノッブもどこか晴れやかな顔をしている。
それからノッブは、腫れている箇所を確かめるように、私の顔をちょいちょいつついて、やがて、ニタリと口の端を持ち上げた。
どんな悪戯を思いついたんだろう? 思ったときには、襟元をぐいと持ち上げられていた。
なにか、柔らかな感触を、唇に感じた。

「今日はこのくらいで勘弁してやる」

ぱっ、と手を離したノッブが、そっぽを向いて立ち上がるのが見えた。
呆然として、我に返る。
さぶさぶと、川縁へ歩いていくノッブを捕まえる。

「ちょ、ちょちょちょちょちょ、いいいいい、いま、いま、いま、ななななな、なにを!?」
「……キスじゃが?」
「いやいやいやいや、ななななな、なんで、そそそそそ、そんなことを?」
「……嫌じゃったか?」
「そ、そういうわけでは…………」
「ならええじゃろ」

ぜんぜん、まったく、よくはない。
だけど、それよりも、嫌ではない、という自分の言葉に驚いた。
それに、もし、もっと正確な表現をするのなら、

「もっとほしい、か?」

そう、それが的確。
でも、そんなことは、とても言えない。
私はただ、ノッブの耳の後ろ側を見つめて、まばたきを繰り返す。
じりじりと、太陽に焼かれた身体が熱くなる。
ようやく振り返ったノッブは、困ったような顔をして、ため息を吐いた。

「……見逃してやろうと、思ったんじゃがの」

呟くのが聞こえたと思ったら、ぐっと胸倉を引き寄せられていた。
さっきよりも強く、唇が重ねられる。
殴り合いで切れたところに、噛み付かれる。
ガツガツと、歯がぶつかる。
だけど、やめられない。
ぬるりとした血の味が、口の中に入り込んで、傷口を舐ってくる。
それが舌だと気付いたときには、私は夢中で、同じように口内を弄っていた。
舌に、唇に、噛み付いては、血の味がする部分を探す。
時折ビクリと跳ねる身体を、逃さないよう、爪を立て、キツく抱き竦める。

「ハァ、ふ、んむっ、ぢゅっ、はぁ……」

初めてのはずなのに、目を閉じ耳を塞ぎ、”こういうこと”を避けていたはずなのに、ずっと前からやり方を知っていたみたいに、私の唇は、ノッブのそれを貪っていた。

「ン……、ちゅ……、ふ、激しいのう、沖田……」

ノッブの指先が、脇腹の辺りを、滑らかになぞってくる。
回し蹴りが入った部分を押されると、鈍い痛みが走った。
私は背中に回していた右手を、お腹に移動させ、ボディブローが決まった部分を強く押す。柔らかな皮膚に指先が沈む。
ノッブは少しだけ、くぐもった声をもらして、私の手を腰の辺りへ退かして、きゅっ、と、胸とお腹をくっつけてきた。
そうされて初めて、ワンピースのボタンが、すべて外されていたことに気付く。
ぺちょり。吸い付くように触れ合った部分から、柔らかさと、熱が伝わってくる。それが酷く、心地よかった。

「……悪くないじゃろ、こういうのも」

答える代わりに、舌を甘噛みする。
もっと密着したくて、裸の腰を抱き寄せると、胸に、少し固くて冷たいものが触れた。
なにかと覗き込むと、目に入ったのは、薄く色づいた丘の先端。
全身の汗腺から、どっと汗が噴き出す。
私は一体、なにを?
眠っていた理性が、急激に覚醒を始めた。
だけどもう、振り払うことはできない。
私は石みたいに固まったまま、含み笑いをするノッブが、鎖骨の辺りに舌を這わせるのを感じる。
骨の形をなぞり、押し当てられる舌、軽く突き当てられる歯に、背中や、脇腹を撫ぜていく、指の動き。どれもこれも、さっきまでとは別人みたいに、淫らだ。
ノッブは、私がもう抵抗しないと思ったのか、私の背中を近くの岩にもたれさせ、

「ほんに、沖田の乳はでっかいのう。なに食ったらこうなるんじゃ?」

と、両胸を救い上げるようにして持ち上げてくる。
元々気にしていたせいか、言われて急に恥ずかしくなった。
たまらず背中を丸めたところで、先端を、ぱくり、と咥えられた。

「ッアぅ、ッン! ちょ……、な、なにするんですか……ッ」
「んー? なんじゃあ、沖田、乳首弱いんか?」

やめさせようと、前髪を掴んだけれど、舌のざらざらした部分が擦れた途端、力が抜けてしまう。
ちくん、と歯を立てられたり、赤ちゃんみたいに、ちゅうちゅう吸われたり、刺激される度、腰が抜けそうになって、甲高い声が漏れる。
その上、身体も、なんだかおかしい。
吸われている部分がチクチクして、背骨がビリビリしびれる。脚の間が、じんじん痛むし、膝が震えて立っているのもやっと。頭の中はぐちゃぐちゃになって、恥ずかしいやら、情けないやらで、泣きそうだった。
必死に絞り出した、拒絶の言葉は、蚊が鳴くほどに小さな声だった。
ノッブは、ぎしっ、と機械が軋むみたいにして動きを止めて、のろのろとだが、口を離してくれた。

「……さっきまで、ノリノリじゃったくせに」
「はぁ、はぁ……。ノ、ノリノリって、なんですか……、もう……」

ぼやけた視界には、不満げな顔のノッブがいた。
恨めしそうな眼をして、私の胸を、むにむに揉んでいる。

「…………あの、……つ、続きを、したい、ってことですか?」
「……わかりきったことを聞くな」
「で、です、よね……」

思えばノッブは、水かけ遊びを始めたあたりか、それより前から、”ひと夏の思い出作り”をしようとしていた。
私も、ノッブが肌を晒した辺りからは、そういう期待がなかったとは言えない。いや、たぶん、ほんの少しだけど、確実にあったと思う。
でも、だけど、私にとってノッブは、そういう相手ではない。

「あの……、沖田さん、ノッブと”ひと夏の思い出”とか、そういうの、なんか嫌です……」
「…………そうか」

私が手を取ると、ノッブは目を伏せて、斜め下を見る。

「その、なんというか、ノッブとは、こう、腐れ縁ってヤツだと思うので……」
「………………そうじゃな」
「だから、その、”そういうこと”になりますと、それ込みで腐れ縁になる気がするというか、絶対そうしてしまうというか……」
「…………うん?」
「なので、私、一回だけとか、無理です……」
「……おん?」
「あと、なんか、されるの、得意じゃないみたいなので……。沖田さんがする方で、そのぅ、この先も、何回でもできるなら、してもいいです、続き……」

ノッブの手を、にぎにぎしている自分の手から、視線を上に持っていくと、ノッブは燃え尽きたような顔をして、空を仰いで、真後ろにバシャンと水しぶきを上げて倒れ、仰向けのまま川を流れていった。

「ちょっ! ノッブ!? どうしたんです!? あの! 流されてますよ!」

慌てて追いかけて、流されたノッブを捕まえる。
ノッブは眉間に思い切りしわを寄せて、「お前、少しは言い方ってもんを考えろ……」と力なく呟いた。
私は首を傾げつつ、とりあえず、ノッブの髪を掴んで、岸の方まで泳ぐ。

「えっと、ラムネ、いります?」
「いらんわ、バカたれ……」

ノッブも熱中症かと、一応ラムネを勧めたけれど、不機嫌そうに拒否された。

「つーか、お前、ヤったことあるんか?」
「あ、あるわけないじゃないですか! 沖田さんはノッブと違って健全なんですから!」
「……ヤり方は、どんぐらい知っとるんじゃ?」
「ほけんた……」
「具体的なトコ、なんも知らんで、どうわしを抱く気なんじゃ? ん?」
「ノ、ノッブが教えてくれたらいいじゃないですか……」

唇を尖らせたら、ノッブは、ふぅ、と息を吐いた。
私の手を取り、指の一本一本をジッと見つめて、指の腹で、私の爪の先をなぞってから、ぱくっと口に含んだ。

「れろ、ちゅっぷ。……わし、される方は経験ないから、上手くいかんかもしれんぞ」

唾液でべとべとになるまで、指を舐ったノッブが、背中を岩に預けつつ言った。
キスしていたときの、余裕たっぷりのノッブとは少し違う。私と同じく、緊張しているみたいだった。
それでもノッブは、先を急ぐみたいに、「ほれ、触ってみい」と、私の手を下腹部に導く。

「え、あの、い、いきなりですか?」
「別にええじゃろ、前戯ならたっぷりしたしの」

頭を抱き寄せられ、唇の切れたところを舐められた。
しびれるような痛みで、踏ん切りがついた私は、思い切って、下草の向こうへ指を進めた。
驚くほど柔らかな皮膚が、指先に触れ、ぎょっとなる。
今日は、ノッブの身体の、柔らかい場所をたくさん知ったけど、ここは、そのどこよりも柔らかい。触れるのを、躊躇うほどに。
私がそれ以上、指を進められずにいると、ノッブは見かねた様子で、

「……その、なんじゃ、ほれ、とりあえず、真ん中をこう、縦になぞってみると良いぞ」

と、助言をくれた。
言われた通りにすると、指先がつるりと、蜜に濡れた肉に挟まれた。
ここって、こんなになるものでした?
戸惑いに肩を震わせるのと同時に、ノッブがぎゅっと首にしがみ付くので、私はすっかり怖気づいてしまう。

「あ、あの、大丈夫、ですか?」
「む……、うむ……。まだ慣れんが、そのまま動かしとって構わんぞ」
「は、はい……、じゃあ、遠慮なく……?」

よくわからない返事をして、また、なぞるように指を動かす。
指が動くと、ノッブがビクビクと身体を震わせるので、私はまた、大丈夫かと声をかける。
それを何度か繰り返して、私は少しずつ、この行為に慣れていった。
つるつると、蜜の滑りに任せて、指を前後させる。
そのうちに私は、指を咥えている溝の、構造が気になってきた。
もちろん自分のここも、似たような感じなのだろうけれど、見たこともなければ、触れたこともないのだ。もし、自分で触れた経験があるのであれば、もう少しイメージが湧くのだろうけど、生憎、私にその経験はないし、今触れて確かめるのも怖かった。
だから、できる限り、優しく、爪を引っかけたりしないように注意しながら、淡々と同じ動きを繰り返した。

「……沖田」
「はい……」
「指、もそっと、上にもってこい」
「えと……、この辺です?」
「うむ……。そこ、なんというか、なんかついとるじゃろ?」
「……はい」

導かれた箇所には、コリッとした感触の突起がある。
くにっ、と軽く捏ねてみると、ノッブが、魚みたいにビクンと跳ねる。

「……ッ、……そこ、悦いトコじゃから、覚えておけよ。敏感じゃから、優しくの」
「は、はい……、あの、こんな感じですか?」
「うっ、くふ……、も、もっと……、優しくじゃ……」

悦いトコの触り方は、加減が難しかった。
最初にしてみたいな、なぞる感じではダメらしく、突起自体よりも、それを濡らした蜜だけを捏ねる感じでやって、ようやく、「そう、そんな感じじゃ」と、言ってもらえた。
それまで、声を押し殺すようにしていた、ノッブの呼吸が規則的で穏やかなものになる。

「あの……、これで、その……、き、きもちいいんですか?」
「な、なんじゃ、良くなって悪いか?」
「い、いえ、じゃなくて、ただ……、さっきみたく、ビクビクしなくなったので……、大丈夫なのかなって……」
「ビクっとするのが良い合図ってわけでもないからの」
「そういうものです?」
「あとで身体に教えてやろうか?」
「そ、それは、遠慮します……」

嫌という訳ではないのだけれど、ノッブがこんな風になってしまう刺激なんて、だいぶ怖い。

「ん……ッ、ふぅ。……んじゃ、次は中じゃな」
「な、か……?」
「ふ。なんじゃ、妙な顔をするな。お前もついとるじゃろ? 指、今度は下ちゅーか、奥の方にもってこい」
「う……、は、はい……」

言われた通りに指の位置をずらすと、溝は、さっきよりも熱くなって、くちゃくちゃに濡れていた。
さっきも柔らかいと思ったけれど、これじゃあ、ほとんど溶けてるみたいじゃないか。
私たちは本気の殴り合いもする仲だけれど、こんなにも、無防備でやわやわな部分に触れるのは、傷つけてしまわないか、心配でたまらなくなる。
それなのにノッブは、

「そう、その辺、押し込んでみい」

なんて、軽々しく要求してくる。
恐る恐る、ゆっくりと、指先に力を込めていくと、ぬっ、と飲み込まれる感触があり、ずぷずぷと根元まで、指が沈み込んだ。
ノッブの中は、熱くて、ぬるぬるしていた。
ヒクヒク震えて、指に吸い付いてくる。
私はなぜだか、胸がきゅうっとなって、ほぅ、と息を吐きだした、ノッブの唇に噛み付いた。
深く舌を絡めると、溶けた肉襞が沈めた指を締め付ける。
初めは気のせいかと思ったけれど、口づけを深めるほど、それは、ハッキリ感じ取れるようになっていった。
悦んでいるんでしょうか?
そう思うと嬉しくなって、夢中で口の中を舐めまわした。

「ん、ちゅぷ……。はぁ、指……。ちゅ、動かせ、沖田……」

言われた頃には、私の頭の中は、ノッブの穴ぼこの中みたいに、トロトロにとろけていた。
考えることもできずに、ただ言われるまま、指を出し入れする。
耳に、ちゅぷちゅぷ、という音が届く。
それが、足元の川の流れから発せられたものなのか、重ねた唇からか、指を突き立てている肉の筒からか、もうわからなかった。

「ハァ……、ハァ……、お、おきた……。さ、さっきのも、いっしょ、に…………。ンッ、ッあ……」

背中に回していた手を、突起の上に持ってくると、ノッブは聞いたことのない声を上げて仰け反る。
私は、ノッブがビクンと跳ねた拍子に、どこかに行ってしまいそうな気がして、ガッ、と反射的に首の付け根に噛み付いた。
優しくと教えられたのに、脚の間に入れた手を、どちらも激しく動かしてしまう。

「ぅあッ、おき……、は、はげし、すぎ……ッ、ンァ……ッ」
「ふぅ、ふぅ……。ノッブ、ノッブ、かわいいれす……」
「あ、ぅ、ヤバ……、わし、も……、イッ…………、んぅッ」

ノッブは私の背中にぎゅうぎゅうに爪を立てて、ガクガクと痙攣したあと、くたりとしてしまった。
いわゆる絶頂というものであろうことは、私にもわかった。

「……へいき、ですか?」
「んむ……。はぁ、指、ゆっくり抜けよ……」
「あ、はい……」

指を引き抜き、呼吸を整えるノッブを見るうちに、蝉の声が耳に戻ってきた。
私はさっきまでより、冷静になった頭で、事後は、どんな言葉をかけるべきなのかを考える。
しかし、考えても答えは見つからない。
ただ、ノッブのことが、愛しくて仕方がなかった。
そっと身体を両腕で包む。

「熱いですね」
「……また川に浸かれば冷えるじゃろ」
「沖田さんは、服を干してからにするので、先に浸かっててください。でも、さっきみたいに、流されて行かないでくださいよ」
「そのときはまた、沖田が回収しにくればええじゃろ」

照れ臭そうにそっぽを向いたノッブは、するりと私の腕から抜けて、手近な石を枕代わりに、川底へ寝そべった。
私はなんだか穏やかな気持ちで、ワンピースを絞って、日向の岩に干す。
ふと、私たちの腐れ縁は、このことでどう変わったのかを考えた。

「……セックスフレンドならぬ、セックス腐れ縁でしょうか?」

なんにせよ、これまでと、大して変わりないような気がした。
私は飲み残したラムネを拾い上げ、一口、口に含む。
炭酸が抜け、すっかりぐだぐだになったラムネは、清涼感の欠片もない砂糖水だってけど、それでもしっかりラムネ味で、切れた口内にじりじりと染みた。


沖ノブの日用に書いた一本。
短いのを三本かくつもりだったのに、無駄に長くなって、当日中にあげれませんでした。無念すぎる。
書いても書いても、先に進まないし、終わらないし、セックスまでたどり着かないしで、執筆中のわたくしは「信長さまー! 沖田さーん! お二人とも、そろそろ、そろそろおせっせを始めていただきたいんですがー? あの、沖田さん、恋心、恋心早く自覚していただいて……、あの、信長さまは、もっと巧みに沖田さんをその気にできると思うんですが……、え? ダメ? ムリ? そ、そうですか……。あー、でも、なんかグダグダしちゃってるんで、もそっと巻きで! 巻きでお願いします! ……って、えぇ、そこでケンカ始めるんですか? しかも殴り合い? あの、すみません、沖ノブの日、明日なんで、明日なんで本当に巻きでお願いします。わたくし、本当は沖ノブおせっせ話を三本書くつもりでいたんですが? あの、お二人、聞いてます? せっかくおっぱじめたのに流れ止めないでもらえますか? あの、もう、しんみりとかいいんで、ギャグ展開とかもっといらないんで、あの、おせっせを、おせっせをですね、さくっと終わらせていただきたいのですが? 聞いてますかー?」って感じでした。お疲れ自分。
やー、なんかエロシーンの次くらいに、夏の描写が好きみたいで、ついつい長くなってしまいました。おせっせ始まるまで長い上に、ぐだぐだしてることを、本当にすまないと思っている。

さて、今回は川でのえちえちですが、えちえちの前にはしっかり手を洗って、アルコール消毒も歯磨きもしてからが望ましいので、どんなばい菌がいるかもわからない川でお励み遊ばされるのは、現実ではスーパーNGなので、良い子も悪い子も真似しないでくださいね。
あと、相手が嫌がったときは、ちゃんと作中のノッブみたいに、どんなに盛り上がっててもストップ。のぞき・盗撮・声掛けも、しない、させない。止めたい場合は警察へ連絡しましょう。
ガチ百合さんとの約束だ!

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